《世界の潮流》民間企業のBID負担金によるエリアマネジメント〜日本では大阪市のBID条例が全国初の事例!

 

●  ※BID(Business Improvement District)制度とは

BID制度は、1970年代にカナダで生まれ、1980年代から米国で導入され、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカなどに広まり、2000年代からは英国、ドイツでも制度化されました。現在、類似の制度も含めれば、世界で約2,000地区あると言われ、国際的に普及した制度です。

 

※BID(=Business  Improvement  District、ビジネス活性化地区)

特定地域の地権者(オフィス床所有者など)から、一律に負担金を徴収(以後、BID資金と呼ぶ)して、その地区の歩道や公園、地下道などの整備や、維持・管理を行う制度。

 

 

 

●  米国のBID制度

米国におけるBIDの設立数は、国際ダウンタウン協会の調査(2011年)によれば、1,002件で、カリフォルニア州232件、ニューヨーク州115件(うちニューヨーク市67件)、ウィスコンシン州82件となっています。

ニューヨーク市の「BID2012年次報告」によれば、BID団体の収入の全体の80%はBID税(=BID負担金)で、圧倒的な割合を占めています。又、支出については、清掃(25.4%)、警備(19.4%)、誘客事業(16.4%)、道路及び景観形成事業(14.0%)の順番となっています。

ニューヨーク市のBIDの事例としては、マンハッタンのグランドセントラル駅周辺エリアや、ブライアントパーク、タイムズスクエアなどがあります。タイムズスクエアBIDでは、車を通行止めにして歩行者天国にする社会実験を継続しており、10億円以上の年間予算を有しています。

 

 

●  大阪市のBID条例が全国(日本)初の事例

米国の再開発手法としては一般的なBID制度ですが、日本は未整備で、大阪市が、全国初の条例可決の事例です。2014年の2月に、「大阪エリアマネジメント活促進条例」(=BID条例)が、全会一致で可決しています。

 

 

(1)大阪版BIDの主な特徴

 

①現行法制化の制度で条例化

大阪の橋下市長の時代に橋下市長の号令で、スピード感を重視し、1年ちょっとの期間で条例化しました。その為、現行法下の制度内で成立可能な条例をつくっています。

 

②対象地区

「地区計画」や「都市再生整備計画」で対象エリアを定めた上で、利便増進協定において、分担金の徴収対象となるエリアを定めています。

 

③収益事業(プロモーション等)は自主財源で

分担金が充当できるのは、公共管理(整備又は管理)など収益性を伴わない事業のみ。街のプロモーション等のイベント・集客活動、および収益的な活動の費用は、自主財源を当てる必要があります。この部分の制度整備が今後の課題です。

 

 

 

(2)大阪版BID制度の意義と課題

意義

課題

■  行政が安定的に徴収する財源のもとで活動できる

■  大きな裁量のもとで公共空間を活用した事業展開が可能となる

■  公共空間の幅広い利用が、自主財源の確保にも繋がる

■  プロモーション等の収益事業には、分担金を充当できない

■  BID団体(一般社団法人)への寄付金が所得税控除されない

■  米国版のBID制度に近づける為には、国の関連法規の改正が必要

 

 

(3)質疑

Q:グランフロント大阪のBIDの分担金はどの程度か?どのような事業に分担金を充てているのか?

A:75百万円/年程度の模様。歩道や街路樹、公園、ベンチ、街灯、案内板、広告塔、オープンカフェなどを整備し、管理も行っている。しかし、イベント費用(数億円単位の模様)は、自主税源によって確保している。

 

Q:グランフロント大阪のBID参加企業は?

A:同地区に床を所有している企業(分担金は面積按分)。三菱地所、オリックス、阪急電鉄、竹中工務店、大林組、積水ハウスなど12社の大手民間企業。タワーマンション地権者は個人になる為、BID地区から除外する事を検討中。

 

●  まとめ

世界の事例に習い、BID制度によるエリアマネジメントの手法を積極的に取入れていく必要があります。再開発を資金面からけん引するこの新しい取組み手法を、調査・研究・提言を継続して参ります。

 

 

(4)現地のようす

JR大阪駅直結のグランフロント大阪

 

 

 

約1万㎡の街区に、3つの高層商業ビルとタワーマンション1棟が立地

 

 

 

 

BID参加企業から集めた分担金で、街区を整備

 

 

 

社会実験ではなく、歩道にはみ出したオープンカフェの整備が可能となっている