横浜にカジノは必要か?その②〜ギャンブル依存症 対策前の「カジノ法案」施行!

カジノを含むIR整備推進法が、本日、公布、施行されました。

しかし、下記の新聞記事にもあるとおり、ギャンブル依存への懸念から、カジノ解禁に反対する世論は根強い。そして、ギャンブル依存症対策の議論は、これからとなっています。

カジノ法案施行(12月26日) 政府、IR制度設計に着手(東京新聞)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016122601001096.html

カジノを合法化してから具体的な事(実施法案)を考える人々!

それが責任ある者の行動と言えるか? 正しいプロセスか?

 

●  ギャンブル依存症の問題

ギャンブル依存症の疑いがある成人は536万人(厚生労働省・2014年調査)もいて、成人人口の4.8%(男性8.7%、女性1.8%)にものぼります。同調査でのアルコール依存者58万人、インターネット病的使用者120万人に比べても、日本最大の依存症問題といえます。

ギャンブル依存症は、本人に病気という自覚がない「否認」の病気であり、「隠す」病気だと言われています。借金と尻拭いを繰り返す段階で家族が認識し、さらに追い込まれた段階で、ようやく自助グループ等に参加し治療を受けるようになります。このように、治療に取り組むまでには長い年月を要することになります。

 

●  カジノ大国(米国)が苦しむ31の理由

米国の全国組織・カジノ審議会は、「なぜカジノは問題か〜健康・社会科学からの31の事実に基づいた命題」を2013年に発表し、カジノ大衆化がもたらす問題の具体例を示しています。(以下その内容を抜粋します)

◯カジノは今や23州に拡がり、気軽に車で行ける身近な存在になっている。週に何回も行ける存在になっている。

◯ 富裕層対象のテーブルゲームで稼ぐスタイルから、中小所得者対象のスロットマシンで稼ぐスタイルに変貌。スロットマシンはカジノ収益の最大80%を稼ぐようになっている。

◯スロットマシンは、他のギャンブルに比べてより依存症に追いやる危険性が高い。又、顧客が時間感覚と金銭感覚を失う陶酔状態(ゾーン)に追いやる性格を持ち、より長くゾーンに留まる事が目的化し、金を使い果たし滅びるまで賭ける事になってしまう。

◯ カジノに近い住民ほど、プレイ回数が増え、常連客ほど問題ギャンブラーになる危険性が高い。2014年の調査によると10マイル(=約16km)以内の住民は2倍の依存症率となっている。

◯ 家計の窮乏、債務の負担、不払いや不正、高利貸しへの依存と自己破産、仕事と家庭の喪失、児童虐待などをもたらす。問題を隠し、嘘をつくことで事態を深刻化させ、本人ばかりか家族や地域社会にまで大きな影響を与える。

◯ 若い世代のカジノ経験率は高く、インターネットカジノの餌食となり、21歳以下でも問題ギャンブラーが拡がっている。

◯ カジノ内の労働者が、問題ギャンブラーになる危険性にさらされている。

◯ カジノの経済的利益は短期的で計測可能であるが、その社会的コストは長期的に顕在化し計測が困難である。

◯州政府の税収源として優遇され、保護され、拡大していく。カジノ育成は、州民を不正で略奪的なやり方から守るという州政府の役割との間で「利益相反」を生み出している。

 

●  まとめ

現在、日本はカジノの有望市場と捉えられており、5,000億円〜1兆円規模の投資意向を示しているカジノ事業者が複数社存在します。しかし、「大数の法則」で成り立つカジノは「誰かの勝ちは誰かの負け」であり、すべてのギャンブルと同様に「胴元」が一番儲かる仕組みで成り立っています。

景気の減速や、中国人VIP客の減少などにより、世界的にカジノが「儲けが難しい」産業となりつつあります。その中で、主要顧客が外国人旅行客の富裕層から、自国の中間所得者へ変貌していく可能性が強く懸念されています。

こうした懸念に真剣に向き合わない、拙速な「カジノ解禁」は、間違っていると言わざるを得ません。自国民や住民にとって、「長期的な幸せとは何か?」を真剣に考え・行動する事が、「責任ある者の務め」ではないでしょうか?