10年後の横浜の観光産業を盛り上げる! 横浜市が観光DMOに取り組むべき理由

観光資源も豊富で立地条件もそろう横浜市の観光産業は、まだまだ大きく成長できる可能性があるにも関わらず、横浜市の観光組織の現状は非常に消極的です。議会でも取上げましたが、世界の観光組織の潮流や成功事例から学び、改革をしていく必要があります。

 

 

赤レンガ倉庫 横浜を代表する観光名所の一つ

 

 

◯世界の観光組織の潮流

国内外からの人の流れを戦略的に創出し、観光による地方創生を実現していく為には、地域の「稼ぐ力」を引き出す取り組みが不可欠です。こうした取り組みの担い手として、諸外国では各種データの収集・分析、戦略の策定やKPIの設定、PDCAサイクルの確立などを基礎とする科学的アプローチを導入した「観光地経営」を行うDMOと呼ばれる観光振興組織が発展してきました。

DMOとは、Destination ManagementもしくはMarketing Organizationの略語で、観光地域のマネジメントやマーケティングを行う組織です。平成27年11月から、「日本版DMO候補法人」の登録制度が開始され、現在全国で111個の組織が登録されています。

 

◯従来の日本型観光組織の限界

従来の観光協会は、補助金頼みの運営となっており、出来うる事は、おのずから限界がありました。しかし、DMOの設立により、自主財源を自ら稼ぎ、そのお金でプロモーションや、マーケティングを国内・国外に向けて積極的に行う専門人材をDMOに抱える事が可能となり、世界の潮流の中では、観光地経営は新しいステージに上がろうとしています。

 

◯予算の拡大→観光戦略の自由度拡大

バルセロナ市のDMOであるバルセロナ観光局の年間予算は、10年前の6億円程度から、FCバルセロナのチケット販売手数料などの自主財源の構築により、10年間で10倍の60億円程度まで膨らんでいます。ハワイのDMOであるHawaii Tourism Authorityはホテル税の一部を財源として、90億円の予算で運営しています。

日本でも、広島県知事の旗振りの元、平成28年3月に設立した「せとうち観光推進機構」の年間予算は4億円程度ですが、自主財源の確保に向けて、地域資源のブランディングや民間企業との提携などを積極的に行っています。11月14日に岡山市で開催された「せとうちDMOビジネス交流会」には、瀬戸内7県の大企業/中小企業600名以上が参加。金融機関との連携をすすめ、観光産業への投資ファンド約100億円の組成をしています。又、民間企業3,000社の会員登録を目指しており、民間企業との連携は新しいステージに入ろうとしています。

 

◯横浜の観光組織の現状

一方で、文化観光局と伴に横浜の観光政策の一翼を担う横浜観光コンベンションビューローの自主財源は5,665万円で、同組織全収入の15.9%です。収入全体の84.1%は横浜市の補助金であり、補助金頼みの運営となっています。当然ながら、今後の「稼ぐ観光政策」の中で不可欠な「マーケティング」や「マネジメント」の専門人材(=プロ)を抱える事が困難な状況です。

 

◯消極的な観光DMOへの取り組み

「稼ぐ観光」を目指し、貨幣価値を高める方法を戦略的に考え、商品・サービスを開発する為には、横浜観光コンベンションビューロー内に、マーケティングやマネジメントの専門人材(=プロ)を育成すべきです。しかし、横浜市や神奈川県は危機意識が薄いせいか、世界や日本全国の潮流である観光DMO設立にむけての動きは消極的です。

 

◯この10年で大きな差が!

民間企業と連携し、自主財源を積極的に稼ぎ、観光振興の戦略に使える予算を10倍にしていこうという組織と、あいかわらずの補助金頼みで運営していこうという組織では、この10年間で大きな差が出来てしまいます。私はこの点について、10年後の横浜の観光振興を思うに、大変強い危機感を持っています。

 

◯本気で取組む「聖域なき改革」が必要!

近視眼的な目標だけでなく、10年後の横浜の観光ビジョンを描き、横浜の観光産業をより高い位置に押し上げる為に、組織の在り方を含めた、「聖域なき改革」が必要です。そのスタートとして、文化観光局、横浜観光コンベンションビューロー、パシフィコ横浜、横浜商工会議所、一部超党派の市会議員など、関係者が参加するDMOに関する勉強会(12月8日開催)を、実施しました。

 

横浜の観光政策の未来を変える為に、皆様のご意見、ご協力をお願いします!

 

 

「第1回 せとうちDMOビジネス交流会」は、瀬戸内7県の民間企業600名以上が参加。会場はDMOへの期待と熱気に満ち溢れていました